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【第三回】映画予告編の魔法

皆さん、こんにちは。ココロドル、エディターの菱沼です。

前回に続き、映画予告編が完成するまでの秘密について話していこうと思います。

 

今回は主に、BGMに注目してみましょう。

 

BGMは、シーンの雰囲気を更に大きく拡張してくれるものなので、

予告編にとって、とても重要なものです。

コメディ映画の予告編にはアップテンポで明るい曲、

ホラー映画の予告編には静かで暗い曲、といったイメージのBGMが多いですよね。

BGMは、その映画の印象を直感的に視聴者に伝えてくれます。

 

また、何かフレーズを見せるときやカットを暗転させるとき、シーンを切り替えるときに、

わざとBGMを止めることで、それまでの余韻を残すような効果も作ることができます。

 

予告編に使われているBGMは、

本編でも使われることのない、オリジナルのものが大半です。

 

でももちろん、有名な音楽、例えばクラシック音楽などもそうですが、

一般的によく知られている、ポピュラーな音楽が使われることもゼロではありません。

そういったときでも、その既存の音楽をそのまま使うのではなく、

「トレーラー化 (Trailerization)」をして、さらに強化します。

どんなに素晴らしい音楽でも、必ずしも予告編とうまく連動するとは限らないからです。

元の曲にはなかった、オーケストラ要素やドラムの音など、要素を追加していきます。

例えば、「オーシャンズ8」の予告編のBGMは、この方法で作られています。

 

さらに別のテクニックとして、

ポピュラーなその音楽を、一から再録音してしまうということもあります。

元の曲から、思い切りトーンを変えるためです。

このテクニックを使って、

元の曲の「ダークバージョン」といわれるBGMが多く作られています。

そしてそれらは、近年のホラー映画の予告編によく使われていますね。

これは、「ムーディーカバー (Moody Cover)」というテクニックです。

 

このように予告編制作においては、BGM制作にかける時間もとても長くなります。

加えて、既述のようなテクニックも必要となってくると、難しいですよね。

 

そんなとき、とても重要な役割になってくるプロフェッショナルが存在します。

主に海外での話になりますが、

予告編用の、オーダーメイドの音楽制作に特化した作曲家がいるのです。

 

映像とピッタリなテンポのBGMは、

彼らが、予告編ディレクターと話し合いを重ねることで、作曲されていくというわけです。

 

さらにはここで、前回お話しした、効果音。

パンチやキック、爆発などの効果音も、テンポよく配置することで、

どんどんリズミカルなものになっていきます。

 

ただ、やりすぎには注意が必要です。

いくら尺の短い予告編だとはいえ、

同じようなリズムの映像を、最初から最後までずっと見せていると、

視聴者に飽きられてしまう危険性が生まれます。

 

なので、途中でBGMを変えるなどして、

映像にも新たな展開を加えていきましょう。

そうすれば、見せたいものが変わったことも直感で伝えられます。

 

ひとつの予告編の中でも、複数のBGM、または、

一曲であっても、途中でテンポが大きく変えられるようなものが、好ましいと言えます。

日本の場合、主題歌がある映画が多いので、

予告編の途中からは、その曲が流れてくるというものが多いですよね。

 

予告編というのは、できるだけ多くの視聴者に興味を持ってもらい、

映画館に足を運んでもらうためのものなので、

予告編の段階で飽きられてしまうと、広告として失敗です。

 

リズミカルなものにするとしても、ただかっこいいからということではなく、

そこに何か含みを持たせていくことで、受ける印象は全く変わっていきます。

 

「レヴェナント:蘇えりし者」の予告編では、

特に後半にかけてリズミカルな構成になっていきますが、

そこで主に使われているのが、「主人公の呼吸音」です。

主人公の「呼吸」という要素を、展開の軸として置き、

視聴者にずっと主人公の存在を意識させることで、

緊迫感がさらに強調されている作りになっています。

 

これからの予告編制作に必要なのは、

今までの伝統的なことも尊重しつつ、新しいことにも次々と挑戦し、

常に変化し続けようとすることをやめない、ということです。

 

そうすることで、映画予告編はいつの時代までも人々を刺激していくものになるのです。

 

今回は、予告編におけるBGM、そしてリズムについて話しました。

次回もお楽しみに。それでは。

  

この記事を書いた人

Yusuke Hishinuma― Editer ―

この記事を書いた人

Yusuke Hishinuma― Editer ―

兵庫県生まれ。幼い頃から映画に興味を持ち、高校卒業後、専門学校へ進学。映画・映像制作全般について学ぶ。映画をこよなく愛し、年間鑑賞本数は200本を超える。最新の映画予告編も欠かさずチェック。多種多様な映像作品から得られるノウハウは、自身の制作現場において大いに生かされている。モーショングラフィックスとテキストアニメーションを得意とし、ディレクターとして独り立ちすべく、日々仕事に邁進中。技術の向上に貪欲で、さまざまな案件を通して研鑽を積んでいる。

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