クレジット情報
◆ 『X エックス』 (原題:X)(2022年)
◆ 監督:タイ・ウェスト (『インキーパーズ』『サクラメント 死の楽園』 など)
◆ ジャンル:ホラー
◆ キャスト:ミア・ゴス、ジェナ・オルテガ、マーティン・ヘンダーソン、ブリタニー・スノウ ほか
◆ 配給:A24、ハピネットファントム・スタジオ
この映画を一言で表すなら
ホラーの定番 × ひねりの効いた裏切りの展開!
なぜこの映画を観たいと思ったのか?
あのA24が手掛けるレトロホラーと話題に!
初めて予告編を見たときから、まずはその奇抜さに魅了されてしまいました。
2022年はとにかくホラー映画が豊作で、
映画のジャンルでホラーが一番好きな私としては絶対に外せないと思い、映画館へ直行しました。
誰におすすめなのか?
ホラー映画やスラッシャー映画が好きな方にオススメ!
定番の展開やセオリー、お決まりの演出を分かっている人なら、
なお楽しめる引用と展開も盛りだくさんです!
どういうとき、気分のときに観るべきか?
爽快なスプラッター表現満載の「真夏のエクストリームライド・ホラー」と謳われており、
現在公開中の続編、『Pearl パール』の予習にもなるはずです。観るならまさに今!この夏に是非!
予告編のサムネとしても特徴的ですが、新たなスクリームクイーンの誕生映画としても楽しめます。
総評
ファーストカット。今作は、フィルムのスタンダードサイズのアスペクト比なのかと思いきや、
カメラが前進すると同時に、なんと左右の黒帯が外へ広がりビスタサイズへと変化していく!
そう、実はそれは黒帯ではなく納屋の壁で、
それまで見えていなかった古民家や車などが、画面の端から徐々に現れる。
冒頭から、唸ってしまうほど演出が巧みで、
「確実におもしろい2時間が始まる!」と、一瞬で心を掴まれてしまいました!
始まってからここまでわずか30秒程ですが、
この興奮の熱量を、実際に観て感じていただきたいです(笑)

この映画の怖さは、ただ単に「殺人鬼に襲われる」ということだけに留まりません。
ある家を訪れた「若者」たちに襲いかかる殺人鬼は、そこに棲む「老夫婦」。
それもなんとホラー映画史上、最高齢!!!
これまであまりなかった、隙を突いた、ヴィラン・殺人鬼の設定が見事ですが
今作のテーマのひとつは、その「若さ」と「老い」。その対比を強烈に突き付けられます。
特に老婆の殺人の動機としては、目の前の「若さ」への憧れが歪み、トリガーとなっていきます。
加えて、主人公・マキシーンへの異様なまでの執着の謎は、
エンドロールでもさらに踏み込んだ形で明らかとなり、
そのキャスティングの妙にもとても驚かされました。思わず声が出そうになります。
印象的な場面として、今作の真の開幕を宣言するかのようなシーン。
老婆による殺人の返り血が車のヘッドライトに着き、老婆の姿が徐々に赤く染まっていく…
まるで「若さ」を取り戻したかのように踊り出すこの光景を忘れることができません。

さらに、おもしろく作用している仕掛けがあり、
ホラー映画には定番の展開、いわゆるあるあるというものがいくつか存在します。
『X エックス』の劇中でも、これ観たことあるな~というシーンが散りばめられており、
『悪魔のいけにえ』や『サイコ』といった名作映画にオマージュが捧げられているのです。
特に終盤、『シャイニング』を想起させる「斧」を使った一連の展開があります。
『シャイニング』では、「追いかける者」が「斧」を持ち、扉を外から壊そうとするシーンがありますが、
『X エックス』では、「逃げる者」が「斧」を持ち、扉を内から壊そうとするのです。
定番に見えて、実はひねりを効かせている、秀逸な裏切りだなと観ていて感じました。

また他にもひとつ。ホラー映画で生き残るのはいつも、健気で弱弱しい女の子の場合が多いのです。
古典的なものでは、確かにそんなイメージもあります。
そんな定石がある上で、今作における決着はどう描かれているのか、
これは是非、本編を鑑賞してみてください。
このような、定番を押さえながら裏をかいてくるような監督の遊び心も必見で、
「映画の最もヤバい要素が全て詰め込まれた、途中下車不可能な真夏のエクストリームライド・ホラー」
そのコピーの通り、爽快感を持って映画を観終わることができる作品になっていると思います。
今作最後のセリフも相まって、実に「気持ちの良い」体験でした。
予告編について
頭からテンション爆上げのBGM! 織り重なる、女性のスクリーム! 最高ですね…
先にもお話したように、私は予告編を映画館で目撃し、それはもう釘付けになりました。
日本版予告編は「30秒」という短尺ながら、
インパクトを大に、コピーを体現した過激で奇抜な映像になっていますよね。
本編中、主人公たちは映画の撮影を行なっているので、
それに沿って予告編も、場面の転換では時々、フィルムのような効果も見られます。
終盤の方では、カメラの動きに合わせて「死ぬほど快感。」の文字を大きく配置。
本編中だと最悪な気まずさとなるこのカットが、
予告編で印象的に使用されており、まさに演出がハマっています。
甲高いスクリームと共にフィルムが焼け、タイトルが現れるのも
主人公たちの状況が危ぶまれることを示唆しているような素晴らしいアイデアで、
お気に入りの予告編です。
次回のレビューでは、続編であり前日譚、『Pearl パール』を観てまいりたいと思います!
遂にやって来た! それでは、お楽しみに!