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予告編ディレクターが『Pearl パール』をレビューしてみた

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2023.08.03
STAFF

予告編ディレクターが『Pearl パール』をレビューしてみた

タイ・ウェスト / パール / レビュー / 映画

クレジット情報

『Pearl パール』 (原題:Pearl)(2022年)
◆ 監督:タイ・ウェスト (『インキーパーズ』『サクラメント 死の楽園』『X エックス』 など)
◆ ジャンル:ホラー
◆ キャスト:ミア・ゴス、デヴィッド・コレンスウェット、タンディ・ライト、マシュー・サンダーランド ほか
◆ 配給:A24、ハピネットファントム・スタジオ

この映画を一言で表すなら

これこそ怪演! 新生スターの誕生!

なぜこの映画を観たいと思ったのか?

今作は、昨年日本でも公開された映画『X エックス』の前日譚としての位置付けのストーリーになります。
前回のコラムでも紹介させていただきましたが、
映画館で『X エックス』にすっかり心を奪われてしまった私は、
当時、エンドロール後に流された続編映画のティザー映像に大喜び。まさかの発表でした。

あの日から丸一年… 『Pearl パール』の日本での劇場公開を待ち続けていたのです!

誰におすすめなのか?

まず当然ながら、前作『X エックス』を観た方にはとてもオススメの映画です。猛プッシュです。

他にも、ホラー映画スラッシャー映画が好きな方、
また今作の舞台が1910年代ということもあり、
古い映画が好きな方にもオススメのテイストとなっています。

どういうとき、気分のときに観るべきか?

まさにオスカーレベル。俳優陣の素晴らしい演技合戦に浸りたいと思ったら、すぐに観てください!

さらに、A24初のシリーズ作品なので、二作を続けて観ることができますね。
贅沢な映画鑑賞の時間を過ごしたいときにもいかがでしょうか。
夜更かしするにも最適だと思います(笑)

総評

タイ・ウェストミア・ゴスが、また再び傑作を生んでくれました。
私自身、オープニングからテンションを上げっぱなしで、とても楽しんで鑑賞しました。

あのマーティン・スコセッシも「我々をもてあそぶ傑作」と評していますが、
今作のおもしろさ・見どころはやはり、
時系列的にはその後の物語である、前作『X エックス』が先に公開されているため、
主人公・パールがさらなる狂気へ堕ちてしまうという、
この映画のおよその展開を既にこちらは分かっているという点にあります。

それを分かっているからこそ、そのトリガーとなる展開では、緊張感もとてつもないものになっています。

『スター・ウォーズ』のルーク・スカイウォーカーのように、
田舎から出て何者かになりたいと願う主人公でしたが、
最終的には、プリクエルのアナキン・スカイウォーカーのように堕ちていく様を目撃させられます。


※↓本編のネタバレを含みます!

主演・ミア・ゴスの演技、特に表情の移り変わりは本当に見事です。

農場に囚われ、夢を奪われ、ネジが完全に外れてしまったパールが、最後に見せた笑顔。
「ホラーと笑いは紙一重」とはよく言ったもので、
史上最も居心地の悪い、目を背けたくても背けられないエンドロールに、私は笑うしかありませんでした。
鑑賞後の印象をそこだけで全部持っていかれてしまうような、怪演。ほんとに凄まじかったです。


私の一番のお気に入りは、パールが参加するダンスショーのオーディションのシーン。
パールのダンス披露が始まった瞬間、
「これを観るために私は一年間待っていたのだ」と感じ、幸せでした。

彼女の背後で繰り広げられる爆発や火花を散らす戦争も、その瞬間はパールを彩る花火や演出と化す。
置かれた時代の中で、世界の中心を夢見るパールの心情を最高の形で表現している、
今年ベスト級のシークエンスです。

このシーンの、軽やかでハツラツとしたパールの姿から、
『X エックス』に登場する、すっかり老婆となってしまったパールを思い出さずにはいられないでしょう。
前作のテーマでもあった「若さ」と「老い」の対比を、
ここでも衝撃的に見せつけられ、パールの人生を思い、とても悲しいような気持ちにもなります。

シリーズ作品というのは続けば続くほど、
登場人物やシチュエーションの背景に深みが生まれていきます。
その度に、様々な角度から思いを馳せることができるのは、
観客としても、とてもおもしろい思い出となります。

それにしたって、パールの夫・ハワードがいい味を出していました。
ラスト、パールの中の狂気は剥き出しとなり、最悪の変貌を遂げた我が家に彼は帰ってきてしまいます。
『X エックス』でのハワードの姿や状態を知っているとなお、
ここから何十年も、二人きりの生活でパールを支え続けていたのであろう彼には、
もはや尊敬の念しかありません(笑) 


そしてエンドロールの終盤、微かに聞こえてくるのは『X エックス』のオープニングと同じハミング。
もういっそこのまま『X エックス』が始まってくれと願ってしまうくらいに、
二本でひとつの映画としても完成していると感じます。

ミア・ゴスはパールを置き、『X エックス』『Pearl パール』
確実に映画スターとして君臨してみせました。
今後、なにか賞を獲得してくれることをいちファンとして願っています。いや、絶対に獲ります!(笑)

予告編について


予告編を通して、名曲である「I Wanna Be Loved By You」がBGMとして使用されています。
『お熱いのがお好き』のマリリン・モンローのカバーとしても、とても有名な一曲です。
曲が持つ古典的な雰囲気が、舞台となる時代設定や本編のテイストを彩っていますが、
その「あなたに愛されたい」という歌詞が、
タイトルのあと、パールのセリフと完全にマッチしているのです。

このラストカット、やはり強烈。
最も無垢なシリアルキラーの誕生を予見させる、日本版予告編だけの見事な締め方です…

中盤のオーディションのシーンでは、
「未知の才能」を「Xファクター」と表し、パールは床の「X」の目印に立つ。
前作との繋がりもしっかりと示唆されており、ファンなら期待が高まりニヤけてしまうでしょう。

また、予告編として展開される各カットを見ていくと、
全体的に、非常に色鮮やかな作品であることが分かると思います。
特に、狂気を秘めたパールそのものであるような赤のイメージを基調とした予告編となっています。

最後に

このシリーズにはあとひとつ、完結作である『MaXXXine(原題)』の公開が控えています。
日本での公開日も未定ですが、タイ・ウェスト×ミア・ゴスの作品にハズレなし。
満面の笑みで、到着を待ちます。

それでは、次回の映画レビューもお楽しみに!

この記事を書いた人
Yusuke Hishinuma
Yusuke Hishinuma
【C.E.S チーフエディター】

幼い頃から映画に興味を持ち、高校卒業後、専門学校へ進学。映画・映像制作全般について学ぶ。映画の年間鑑賞本数は200本超。最新の映画予告編も欠かさずチェック。多種多様な映像作品から得られるノウハウは、自身の制作現場において大いに生かされている。モーショングラフィックスとテキストアニメーションを得意とし、各所から定評がある。

幼い頃から映画に興味を持ち、高校卒業後、専門学校へ進学。映画・映像制作全般について学ぶ。映画の年間鑑賞本数は200本超。最新の映画予告編も欠かさずチェック。多種多様な映像作品から得られるノウハウは、自身の制作現場において大いに生かされている。モーショングラフィックスとテキストアニメーションを得意とし、各所から定評がある。

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