皆さん、こんにちは。ココロドル、チーフエディターの菱沼です。
今回は、映画の字幕についてお話していきたいと思います。
字幕と吹替、どちらを選ぶ?
皆さんは海外映画を観るとき、字幕版と吹替版のどちらを選ぶでしょうか。
日本人として、永遠のテーマのひとつでもありますよね。
私自身は、英語など言語のニュアンスや俳優のオリジナルの演技を楽しみたいので、
字幕版を選ぶことが圧倒的に多いです。
鑑賞本数が多くなってくると、何かの短い言い回しやフレーズ、
スラングが身に付いたりもするので、言語の勉強にもなると思います。
ただ劇場上映後、ディスク化や配信が始まると、家での二回目の鑑賞は吹替版を選びます。
言い回しなども比べて観てみたいからですが、海外ドラマなどどうしても視聴時間が長くなるものだと
字幕を追う目が疲れて集中できなくなってしまうことがあるので、最初から吹替を選んだりもします。
場合やものによって変わりますね。特に、好きな声優さんが吹替を担当していたら嬉しいです。
なんならトム・クルーズは森川智之さん、ダニエル・ラドクリフは小野賢章さん、という風に強く印象付き、
俳優本人の声をもう覚えていないくらい、なんてこともあります(笑)
字幕と吹替でセリフの言い回しはかなり異なるので、
比べて観ることで、「そんなことを言っていたのか」と発見でき、しっかり腑に落ちたりもします。
直近で言うと、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』を
最初は字幕、二回目は吹替で鑑賞しましたが、これは吹替の演技がとても好きでした。
加藤浩次さんの慟哭、そして山寺宏一さんのオリジナルのニュアンスに合わせた見事な演技に、
二回目の方がぐっときて泣いてしまいました。
劇場で上映されるのは圧倒的に字幕版が多く、シネコンでは毎週新作映画が公開されていくので、
吹替版の上映は比較的すぐに終わってしまいます。
いわゆる映画好きの人は、俳優の息遣いなどの細かな演技も楽しみたいために
字幕版を選ぶことが多いような気がしています。その俳優のファンであれば尚更ですよね。
映画字幕にはルールがある!
でも、字幕版を観て驚くのは、
映画を一本観終わったときに、「この俳優、ずっと日本語で喋ってた?」というくらい、
いつも自然にスッと自分の中に入ってきていることです。
それもそのはず、映画の字幕にはいくつかルールがあります。
俳優が話すセリフをすべてそのまま直訳しているわけではありません。
基本的には、「1秒間に4文字」「1画面には2行。最大20文字まで」という規定です。
どんなに長いセリフでもルールに沿います。わかりやすさから離れてしまってはいけません。
その上で、話し言葉であるように印象的なアレンジを加えていきます。
最近では名字幕と称された、『RRR』の「“ナートゥ”をご存じか?」という翻訳。
この「ご存じか?」という言い回しに、そのキャラクターの個性や教養が
インパクトも強く表現されていますよね。大好きな字幕です。
映画本編だけでなく、私たちが行なう予告編制作でも、字幕には注意を払います。
お気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、
予告編の字幕は、本編のそれとはまたニュアンスが異なっています。
本編よりも格段に尺の短い90秒間の中で、ひとつの流れを構成していくため、
そのままの字幕としてしまっては、内容はほぼ伝わりづらいです。
既にある本編の翻訳からは離れすぎないよう、作品の宣伝担当の方とも話し合ったりしながら、
いいバランスの「意訳」を探っていきます。
弊社で制作した、『ベネシアフレニア』予告編の01:09あたり、殺人鬼から追われる女性の悲痛な叫び。
ここでは意訳をしています。同じニュアンスの叫びのセリフを、
「少しだけ空耳で日本語にも聞こえる」+「シンプルで恐怖が伝わりやすい」という理由から、
「助けて!」としました。
改めて聞いてみてください!本当に「助けて!」と叫んでいるように聞こえるんです(笑)
その文字に込められた思い
本編においても、予告編においても、
字幕はいかに読みやすく、またオリジナルを尊重してその魅力を引き出すべく翻訳がされています。
1秒間に4文字。
そこに凝縮されている感情や力を楽しむことで、どんどん海外映画鑑賞がおもしろくなります。
皆さんも、好きな映画の字幕版と吹替版をぜひ比べて観てみてください!
その映画をより深く知ることができるはずです!
ちょこっと余談ですが…
映画字幕あるあるです。
「俺の夢は・・・」という風に、セリフの語尾が「・・・」となっている字幕が表示されたら、
「何かが爆発するぞ」とか「幽霊が襲ってくるのでは」と直後の展開が読めてしまうことがあります(笑)
前までは、そこで構えてしまったりしていましたが、
今ではそれも映画鑑賞の醍醐味でもあるような気がします。「お!来るぞ来るぞ!」と楽しんでこそです!
コラムを書いているうちに、海外映画が観たくなってきました。