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超重要!”アスペクト比”が映画にもたらす魔法

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2023.10.13
STAFF

超重要!”アスペクト比”が映画にもたらす魔法

シネマスコープ / アスペクト比 / 映画 / 予告編

みなさんは映画を観る時、上下や左右にある黒い帯みたいなもの、気になりませんか?

これはレターボックスと呼ばれており、映画には必ずと言っていいほどついています。
もちろんこれは「なんとなくカッコイイから」つけているわけではなく、媒体(劇場のスクリーンやスマホ画面)コンテンツ(映画)画面アスペクト比(幅と高さの比率)が異なるときに起こるものなのです。

物理的な理由で発生しているレターボックスですが、実はこれが映画のストーリーや印象を左右するとても大切な要素なのです!

今回はそんな少しニッチなアスペクト比の種類と、それらが映画にもたらす様々な影響をお伝えできればと思います。

スタンダードサイズ 1.33:1

16mmフィルムでサイレント映画を撮っていた時代、そのフィルムに合わせて作られたのがこのスタンダードサイズです。そのため、昔の映画は基本このサイズです。

昔のテレビも1.33:1(4:3)の比率となっており、私たちにとっても身近なアスペクト比なので、どこか懐かしいノスタルジックな雰囲気を感じますよね。
この”懐かしさ”を演出するために、現代映画でもこのスタンサードサイズを使う映画が実は結構多いんです。


『もう終わりにしよう。』という映画は、進んでいくうちに登場人物が忘れられない過去に囚われているということがわかっていくのですが、”過去に囚われている”イメージを最初からこのアスペクト比で表現しているのかもしれません(あくまで個人の考えです笑)。


また、こちらの『ザ・ホエール』という作品は、狭い家の中を巨大な男が窮屈に過ごすイメージを画面いっぱいに映し出すためにスタンダードサイズを使用しています。
もし、これが後述するシネマスコープサイズだと、また違った印象の映画になりそうですよね。

アカデミーサイズ 1.37:1

サイレントからトーキーに変わる時代。フィルムにサウンドトラックをつけたことで、その分映像の幅が狭まってしまいました。1.19:1程度だったそうです。
そんな時、もう少しワイドなサイズにしたいということで生まれたのが、このアカデミーサイズです。
1932年〜1952年までに撮影された35mmフィルムのトーキー映画はほぼほぼこのアスペクト比だそうです。

スタンダードよりちょっと横に広いということで、現在も時々、このサイズを使用する映像のこだわりが強い監督がいます。

シネマスコープサイズ 2.39:1(1970年代までは2.35:1)

ここから映画に革命がおこります。
スタンダードサイズのテレビが大流行し、わざわざ映画館に来る人が減少してしまったのです。

それならばっ!映画でしか味わえない迫力のあるワイドな画面を作ろうじゃないか!
ということで20世紀フォックス社が生み出したのが、こちらのシネマスコープ

アナモルフィックレンズという、イメージを横方向に圧縮した状態で撮影するレンズがあり(そのイメージは1.33:1のスタンダードサイズ)、それをポスプロ段階であとから横方向に2倍に伸ばすことでワイドな2.35:1の映像を生み出すという原理を用いています。
※アナモルフィックレンズはレンズフレアの形に特徴があるので、気になる人はぜひ調べてみてください!

近年では「シネマティック」という表現がよく使われていますが、簡単にそのシネマティックさを出すために、シネマスコープサイズになるようなレターボックスを上下に入れている動画が多いですよね。

もちろん迫力ある映像に適した比率なので、アクション映画やSF映画など大規模なスケールの映画で使われることが多いです。

こちらの『地獄の黙示録』の予告編の38秒あたりのカット、光が横に伸びるレンズフレアはアネモルフィックレンズの特徴ですね。

『フォードvsフェラーリ』はレースシーンの車体を横から捉える撮影がシネマスコープによってめちゃくちゃ映えています!

この『レザボア・ドッグス』のオープニングシーケンスなんかは、シネマスコープを最大限に生かす横並びの最高なシーンですよね。

ビスタサイズ(アメリカンビスタ) 1.85:1

現在の映画で最も一般的なサイズはこちらではないでしょうか。
20世紀フォックス社のシネマスコープに対抗して、パラマウント・ピクチャーズ社が開発したのがビスタビジョンカメラ
基本的な1920×1080の16:9の比率に最も近く、上下に少しレターボックスが入ります。ちょっと横長です。

画面が広く、様々な構図に対応できるので、ヒューマンドラマなどに多く、スタジオジブリの長編作品などもすべてこのサイズとのことです。


ビスタサイズ(ヨーロッパビスタ) 1.66:1

こちらはビスタサイズ(アメリカンビスタ)と比べて、上下ではなく、左右に少しレターボックスが入ることで、
スタンダードサイズとまではいかない、ちょっと縦長になります。

映画の中では少しめずらしい比率ですが、これも人気のある比率です。
少し画面が狭まるので、画面の隅々まで目に入り、細かいところにも気が付くので、芸術性が高い映画にもよく使われます。
登場人物が画角に2人入ったりすると、ちょっと狭く感じて、違和感だったりドキドキ感だったりを感じる距離感になります。

最後に

いかがだったでしょうか。
近年では『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』などのように、戦闘シーンではシネマスコープに、過去回想シーンでは正方形に近い画面にしたりと、途中でアスペクト比を変える面白い映画も出てきました。

「なぜこの監督はこの比率を選んだのだろう…」と考察するのもとても面白いので、ぜひ皆さんも映画を観に行った際には注目してみてください!

この記事を書いた人
TANAKA Mikihiko
TANAKA Mikihiko
【Div1.Div2 ディレクター】

TV局でADの経験を積み、地上波レギュラー番組の担当に抜擢された経験の後、映像制作会社で、数々の案件を担当する。映画をこよなく愛し、年間鑑賞本数は200本を超える。予告編ディレクターとして各所から信頼を寄せられる中、演出環境で経験した知識を活かした様々な実績が話題を呼び、各所から評価され数々の案件に携わる。
テレビ、映画館、街頭ディスプレイ、駅、店舗サイネージ等の主要な広告媒体で配信される映像を多数制作。

TV局でADの経験を積み、地上波レギュラー番組の担当に抜擢された経験の後、映像制作会社で、数々の案件を担当する。映画をこよなく愛し、年間鑑賞本数は200本を超える。予告編ディレクターとして各所から信頼を寄せられる中、演出環境で経験した知識を活かした様々な実績が話題を呼び、各所から評価され数々の案件に携わる。
テレビ、映画館、街頭ディスプレイ、駅、店舗サイネージ等の主要な広告媒体で配信される映像を多数制作。

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